更新 2011/03/03

渡辺富工務店

富工務店の来し方を想う


第15話 急がば回れ

先月半ば、 新潟にいるG君の結婚式に招待されました。 G君は4年近く富工務店の大工でしたが、実家の工務店を継ぐ為に帰郷した人です。
新潟市にある一流ホテルのロビーに入ると「やあー お久しぶりですね」と両手を挙げて駆け寄ってくるH君、 「お元気そうですね、私を覚えていますか?」とM君、 「訓練校の頃はいろいろご迷惑をおかけしました」とK君 、 「20年ぶりでお逢いしましたね」とB君。
訓練校の修了生や事務所勤務だった元社員たちが次々挨拶にやって来て、まるで富工務店OB会の様です。 思いがけず懐かしい人々に逢って、10年前か、20年前かのあの顔、この顔を想い出しておりました。
H君が「俺の一番の想い出は、なんといっても研修旅行の富士五湖めぐりの時の精進湖一周ロードレースです」と言うと、 周りの人達も皆「思い出すねー、近道をしようと思って とんでもない結果になったねー」、 「藪の中に入って道なき道を迷いながらバラのとげで手や顔は傷だらけ おまけに服はやぶれるし靴はいたむし、死ぬかと思ったよー」、 「旅行中にストップウオッチをだして5Km以上ある湖の周りをロードレースさせるなんて考えもしなかったよなー」
昭和49年3月の研修旅行の時の精進湖一周ロードレースの話が弾んでいましたが 披露宴の開宴の案内で話はストップ。 盛大な披露宴が終わって、帰りの列車の切符も用意しておいたので ひきとめるOBの人達との別れを惜しみながら帰京しました。

帰宅して早速 富士五湖めぐりの文集を出してOB達の想い出の精進湖ロードレースの文を読みました。 その中より傍道を走って苦労した人達の一文です。
K君 前文略
 人より先になろうと思って近道をしたら 何とそこは岩だらけ、藪の中は 野バラのとげだらけ、道らしい道もなく 岩を跳び越え、藪の中をかき分けて手や顔は傷だらけ、苦しかった. 近道は結局は遠回りでタイムオーバでビリ 後文略
S君 前文略
 社長さんの話で「今回のロードレースは人生と同じで間違った道は、すぐ引き返さないと苦しい道を歩くことになる」と言われたが、確かにそう言えると思う。でも人の作った道を歩くのはたやすい事だし楽だろう、しかし 道の無い所を切り開いて、ほんの小さな細い道でも見つけて進むこともまた一つの人生だろうと僕は思った。 後文略
W君 前文略
 スタートした時は、訓練生と一緒だったが、若い生徒はとても速くてついて行く事が出来なかった。なんとか近道してでも先に出てやろうと思って コースからはずれて湖のまわりを歩くことにした。 すると だんだん藪の中に入り、道らしい道もなく、近道がどんどん裏目に出てしまった。 なんとか道路に出ようと必死になって歩き回った。手、足、顔に傷が付き、服も靴もいたんで苦労して 漸く ゴールインしたものの結果は最悪でタイムオーバー。 だが忘れる事の出来ない貴重な体験をしたと思う。 人生もこれに似たようなもので 近道は、そう簡単に手に入るものではなく たとえ あったとしても それは険しく大変苦労するだろうという事。 コースから外れ 間違いに気付いた時 元の道に戻る決断をする事、2つの大きな事を学んだ精進湖ロードレースであった。
審判係りのOさん
「精進湖一周のロードレースは、いろいろな意味で想い出を残した。砂を巻き上げる突風と、時々粉雪の舞う中でのレースは、走る人も大変だったと思ったが、それを採点、記録した人もなかなか容易ではなかった」 後文略
社長の訓話
「精進湖一周のロードレースは 沢山の想い出を残す事になるだろう。近道を行こうと藪の中に入った者も大分あったが、先がわからないのだから、コースをまじめに走ってもらいたかった。世の中も全くこれと同じで 先ずコースをまじめにどんどん突き進む事だ。 何かうまい餌につられて傍道に入って行くと 引き返す事が出来なくなる。傍道は、充分研究して自信がつかない限り進めない、殊に建築屋は一回信用を失うと取り返す事は容易ではない。 先ずコースをまじめに進む事だ。

私は、その時、Oさんと審判係りとして順位やタイム等を記録していました。 レースを開始したのが午後2時、正規のコースを走って戻って来た人で一番早くゴールインした人のタイムが26分、60歳以上の年長組の人でも48分でゴールインしています。 近道をしようとして傍道に入った最後の人が4時を過ぎて戻って来ない時は、もしや樹海にでも迷い込んで出てこられないのだろうか、途中で怪我をして動けなくなっているのではないか、 次々と不安になってバスの中から波立つ湖面を見ながら、無事に戻ってくれるよう祈り続けておりました。 待ちきれなくなって事務所のHさんとYさんが戻らない人を探しに出かけようとした時に 一人、二人、三人と足を引きずりながら戻って来ました。最後の一人がバスに戻り、怪我をしている人はいないと分かり、ほんとうにほっとしました。

G君のお祝いの席で思いがけず再会したOB諸氏、元気で頑張っている彼らの様子から、精進湖ロードレースは良い人生の教訓となっているのかもしれないなあと、山桜の花に粉雪の舞っていた37年前の春3月に思いを馳せつつ「急がばまわれ」の格言を改めて考えさせられた新潟の旅でした。

急がば回れ(完)     (青)
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第16話 青のお正月

富工務店の来し方に思いを馳せつつ、一昨年から綴って参りましたわたくし青も、お正月のお休みを頂きました。今回は”青の独り言”にしばしお付き合いください。

暮れに菩提寺から頂いた「浄土寶暦」平成23年度版によると大正13年生まれの私は、今年、平成23年、八十八歳で米寿とあります。
実際の年齢は今年の誕生日が来て八十七歳になるので米寿は来年ですが、米寿は、数え年で祝うところも多いようです。続いて、九星占い。私の「四緑木星」は「遠く遥かに見える光明を求める運気」との事、万事に「塵も積もれば山となる」の諺の如く僅かな物事でも疎かにせず、小さな変化でも見逃さず油断しないこと、時間はかかってもあきらめずに陰徳を積むこと」 と書いてあります。陰徳とはどの様な事かと辞書を見たら、陰徳とは人知れずに良い行いをすることで、陰徳を積めば必ず良い報いが現れてくる「陰徳あれば陽報あり」だそうです。
これは凡人の私には、なかなか難しい! 更に「徳」とは如何なることかと辞書を読むと、修行によって身にそなわった品性と、善や正義をつらぬく人格的能力、正しい道を行って体得した品性とあります。平成23年は、私にとって人知れず修業を積まなければ果報はない年のようです。

「果報は寝て待て」というおもしろい言葉を思い出しますが、どうも寝ていては陽報を得られないようです。とは言うものの、せっかくのお正月休み、ゆっくり休むことにして、ロマンスカーの展望車で、箱根の温泉に出かけました。

何十年も前から旅の案内を頼んでいる大手旅行会社の担当者によれば、ロマンスカーの10号車は展望車というふれこみでしたが、残念なことに車両の中程の席。横の窓から見える景色だけで展望車と言えるのでしょうか。さらに箱根湯本で登山電車に乗り換えるのですが、10号車は登山電車から一番遠い車輛だったのです。米寿にならんとする老夫婦がどんなに頑張って歩いても、乗り込んだ登山電車に空いた席は無く、到着までの40分間、満員の中を立ち通しとなりました。
登山電車が湯本から15分おきに出ている事を調べておけば湯本駅でゆっくり次の電車を待って、楽に腰かけて車内アナウンスを聞きながら、移り変わる素晴らしい景色を眺めていたのにと、旅行会社任せにした事が悔まれました。
登山電車の情報などを一言教えて欲しかったと、帰宅後、旅行会社の担当者に実情を話すと「有難うございます、貴重なご意見、以後充分に気をつけます。あなたの様に注意してくださるお客様はあまりおられませんので勉強になりました。」と言う返事。口先だけの社交辞令かなとも感じられました。本当のプロ意識を持ってもらいたいものです。

高い正月料金を払っているので腹も立ちましたが、人の動きの多いお盆やお正月には、老人は家で寝て待っていたほうが果報だったのでしょうか。と思いつつも、まだまだ修行の年は始まったばかり、徳を積むための修行の旅であったかと思うこの頃です。しかし、四緑木星も米寿ともなりますと、些か厳しい。まあ、あまり無理せず、陰徳を積むべく、今年も努力致しましょう。皆様どうか本年も宜しくお願い致します。

青のお正月(完)     (青)
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